わずか数十年で台頭してきたオフセット印刷の技術

15世紀の半ば、ヨーロッパで発明された印刷技術は、後の世界に大きな影響を与えることとなりました。ドイツ人のグーテンベルクが、金属製の活字を用いて印刷物を多量に生産する方法を考え出したのです。それ以後ほぼ500年にわたって、人類が活用してきた出版技術は、基本的にグーテンベルクの考案した方法そのものでした。この方法は一般に「凸版印刷」と呼ばれます。

これは、基本的にはゴム印や木版画などと同じ仕組みです。活字の凸部にインクを付け、それを紙に押し当てて文字を転写するわけです。しかし、20世紀の半ばを過ぎたころから、別の方式が多く用いられるようになりました。それは「オフセット印刷」という技術です。

この方式の特徴は、版と紙が直接には触れ合わないことにあります。両者の間にはゴムなどでできた中間転写体が介在します。版はまずその中間転写体と接し、そこにインクを付着させます。ついでそれが紙に押し付けられて、文字や図形や写真などが紙の上に姿を現すわけです。

したがって、ゴム印のような方式では実際の文字と左右反対に作られた活字が必要になりますが、こちらの方法では版に描かれた文字や図形などは同じ向きのままとなります。このオフセット方式が考案された当初は、生産速度は速いが仕上がりは汚いと言われ、あまり受け入れられませんでした。しかし、第二次世界大戦後、オフセット技術は品質面で飛躍的な進歩を遂げていきます。1960年代にオフセット方式で生産されていた米国の新聞はわずか3%ほどでしたが、1970年までにはそれが60%を超えるほどになったのです。

このオフセット方式は、今では世界中の多くの印刷物に活用されています。

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